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情報段差にお気を付けください

作成者: 藤田陽司|2026年7月29日

私が唎酒師であるからして、居酒屋にはよく行きます。行かねばなりません。(ビシッ)ちょっといいお店に行くと、店員さんが席まで案内してくれます。その時に「ダンサーにお気を付けください」と言いますね。え、誰も踊っていない…あ、「段差」です、すみません(笑)お店の配慮の細やかさがそこでわかります。


道路や建物にある段差は、目で見ることができます。段差があると分かれば注意することができ、何なら手すりやスロープを設けることもできます。やっかいなのは、目には見えない段差が私たちの暮らしの中にある、ということです。ある人は知っているのに、別の人は知らない。知ってはいるけれど、実際には使えない。普段は分かっているつもりでも、いざというときには行動できない。Googleマップなどが良い例でしょうか。使っている人は近道できることもある。し、間違ったところを案内されることもあり、地元の人は使わなくてもたどり着ける、など。本当に優れた技術や文化が知られないことがある一方で、広く知られているものだけが高く評価される。こうした情報をめぐる差を「情報段差」と呼んでみたいと思います。情報段差は、単に「情報を持っているか、持っていないか」だけでなく、情報にたどり着き、理解し、使い、行動し、その価値を正しく認識するまでのさまざまな場所に生まれます。情報段差には大きく四つの種類があると考えます。

1.認知段差――知っている人と、知らない人の差

一つ目は「認知段差」です。必要な制度、サービス、商品、技術、機会などについて、知っている人と知らない人の間に生まれる段差です。誰でも利用できる行政支援制度があるのに、その存在を知らない。災害時の避難場所が決められているのに、どこにあるか知らない。自分に合った教育や就職の選択肢があるのに、情報が届いていない。昔から繰り返されている典型的な騙しのパターン、それを知らないために被害に遭ってしまう。…情報がどこかに掲載されているだけでは、「伝わった」とは言えません。検索しなければ見つからない情報は、検索する言葉を知らない人には届きません。Webだけで発信された情報は、結局デジタルに慣れていない人(案外多い)には届きにくい。専門用語で書かれた情報は、自分に関係するものだと気づかれない。認知段差をなくすには、必要な人を具体的に想定し、紙、Web、検索、AI、動画、人による説明などを組み合わせて、相手が出会える場所に情報を置く必要があります。「発信したか」ではなく、「必要な人に届いたか」、「伝えるか」でなく、「伝わるか」が基準になります。

2.活用段差――知っているのに使えない人と、使っている人の差

二つ目は「活用段差」です。存在や使い方を知っていても、実際には利用できない人と、日常的に使いこなしている人との間に生まれる段差です。生成AIを知っている人は増えました。しかし、仕事や生活の中で具体的にどう使えばよいか分からない人も少なくありません。便利な行政サービスがオンライン化されても、操作が複雑で申請を完了できないことがあります。学校から端末を配布されても、教員や生徒が授業の中で十分に活用できなければ、端末を持っているだけで終わります。知っていることと、使えることの間には、想像以上に大きな段差があります。この段差をなくすには、機能を提供するだけでは足りません。分かりやすい画面、読みやすい説明、迷わない手順、相談できる人、繰り返し試せる機会まで設計する必要があります。「導入したか」ではなく、「その人が使えるようになったか」が基準になります。

3.即応段差――知っているのに、いざというときに使えない差

三つ目は「即応段差」です。知識としては理解していても、緊急時や予想外の状況で実際に行動できる人と、行動できない人との間に生まれる段差です。避難経路を知っていても、災害時に停電し、通信が途絶え、周囲が混乱すれば、普段と同じようには判断できません。詐欺の手口を聞いたことがあっても、突然電話がかかってきて不安をあおられると、知識を思い出せないことがあります。AEDの使い方を学んでも、実際の場面でためらい、動けないこともあります。「知っている」と「その場で使える」は同じではありません。即応段差をなくすためには、平時から繰り返し触れること、実際の場面を想定して練習すること、迷ったときにも自然に行動できる表示や仕組みを用意することが必要です。防災情報であれば、非常時だけ使う難しい仕組みではなく、日常的にも利用されていることが望ましい。これは、平時と有事を分けない「フェーズフリー」の考え方にもつながります。「説明したか」ではなく、「必要な瞬間に行動できたか」が基準になります。

4.評価段差――本当の価値と、知られ方の差

四つ目は「評価段差」です。本当は優れた価値を持っているのに知られていないものと、広く知られているために高く評価されているものとの間に生まれる段差です。地方の小さな会社が、世界に通用する技術を持っている。地域の酒蔵が、その土地の水、土、人の営みを受け継ぎながら酒を造っている。中小出版社が、社会に必要な知識を丁寧に本にしている。長年働いてきた職人が、ほかでは再現できない技術を持っている。しかし、その価値が言葉になっていなかったり、検索しても見つからなかったり、伝え方が整理されていなかったりすると、社会から存在しないもののように扱われてしまいます。一方で、広く知られているものは、それだけで安心感や信頼を得やすく、必ずしも内容に大きな差がなくても選ばれます。良いものが、良いというだけで自然に伝わるわけではありません。評価段差をなくすには、その価値が生まれた背景を掘り起こし、誰にどのような意味があるのかを言葉にし、適切な形で社会へ届ける必要があります。「どれだけ有名か」だけではなく、「本当の価値が正しく理解されたか」が基準になります。

四つの情報段差は、つながっている

認知段差、活用段差、即応段差、評価段差は、それぞれ別の問題に見えます。しかし、実際には互いにつながっています。まず存在を知らなければ、使うことはできません。存在を知っていても、使い方が難しければ活用できません。普段使えていても、緊急時に行動できなければ人を守れません。そして、価値が正しく知られなければ、優れた商品、技術、文化、知識が選ばれず、やがて失われてしまいます。つまり、情報を「出す」だけでは情報段差はなくなりません。届くこと。分かること。使えること。必要なときに行動できること。そして、本当の価値が正しく認識されること。そこまでつながって、初めて情報が社会の中で生きたことになります。

cte.は、情報をつくる会社から、情報段差をなくす会社へ

cte.は、組版や印刷物の制作を原点として、半世紀以上にわたり「情報を形にする仕事」に携わってきました。現在はDTPや印刷に加え、Web、システム開発、AEO、AI活用、教育DX、人材支援、企業出版、地域文化の発信などへ事業領域を広げています。これらは、一見すると別々の事業に見えるかもしれません。しかし、「情報段差をなくす」という視点で捉えると、一つの役割でつながります。

  • DTP・印刷・Web・AEOによって、必要な情報と出会える状態をつくる
  • 編集・デザイン・システム開発によって、情報を理解し、使える形にする
  • 教育・マニュアル・人による支援によって、必要なときに行動できる状態をつくる
  • 企業出版・ブランディング・地域プロジェクトによって、埋もれている価値を正しく伝える
  • AIや情報保護の仕組みによって、新しい技術を安全に利用できる環境をつくる

印刷もWebもAIも人材も、それ自体が目的ではありません。情報段差をなくし、誰もが情報にたどり着き、理解し、使い、判断し、行動できる社会をつくるための手段です。私たちは、cte.を次のような会社へ進化させたいと考えています。

cte.は、社会にある「情報段差」をなくす会社です。年齢、障害、言語、地域、デジタル環境にかかわらず、必要な情報を「届く・分かる・使える・動ける」形にし、埋もれている価値が正しく評価される社会をつくります。

「つくった」ではなく、「段差をなくせたか」

これからのcte.は、印刷物やWebサイト、システムを納品しただけで仕事が終わったとは考えません。その情報は、本当に必要な人へ届いたのか。初めて見る人にも理解できたのか。知るだけでなく使える状態になったのか。いざというときに行動できたのか。知られていなかった価値が正しく伝わったのか。「何をつくったか」ではなく、「どの情報段差を、どれだけ小さくできたか」までを考える会社でありたいと思います。私たちの直接のお客様の多くは、出版社や印刷会社、情報発信側の企業です。その先には企業、出版社、学校、自治体、医療・福祉機関など、情報発信したい企業がいます。そういったお客様との直接取引も最近頓に増えています。忘れてはならないのは、その仕事の先には必ず情報の受け手である生活者、ユーザーがいるということ。企業や自治体から仕事をいただきながら、その先にいる生活者の「知らなかった」「使えなかった」「動けなかった」を減らしていく。そして、知られていない優れた価値を社会へ届ける。社会の困りごとを解決することがcte.の仕事となり、その仕事が会社の成長にもつながる。そのような事業構造をつくることが、私たちの目指す社会問題解決型企業の姿です。

あなたの身近にも、情報段差はありませんか

私たちcte.の存在意義は、コミュニケーションのギャップをなくすことそのもの。それにより、人々がより暮らしやすい社会になると信じて企業活動をしています。コミュニケーションのギャップをなくすこと、その手始めに身近な情報段差に気づくことから始めたいと思います。知っている人だけが得をして、知らない人が不当に損をしていないか?知っていても、使えない人が置き去りになっていないか?普段は分かっていても、いざというときに動けない仕組みになっていないか?本当に優れたものが、知られていないという理由だけで埋もれていないか?情報段差は、目には見えません。だからこそ、情報を発信する側、商品や制度を設計する側が注意して見つけ、なくしていく必要があります。情報段差に配慮し発信する。もしあなたが情報段差を見つけたなら、私たちcte.と一緒に段差をなくし、誰もが越えられる形に変えていきませんか。