Pocket

ストラクチュアルブルー(構造色)について

今回はまだ発売されたばかりのある車の紹介をしたいと思います。

ストラクチュアルブルー

トヨタ自動車が展開している高級車ブランド、レクサス(英語: LEXUS)が2018年4月5日、特別仕様車「Structural Blue」という車を発売し、大きな話題を呼びました。一見ただのメタリックブルーの車ですが、注目が集まっているのはその塗料です。この車は「世界一美しい蝶」と呼ばれるモルフォ蝶の羽をヒントに、15年という歳月をかけて作られた特殊な塗料を使い、素材に色を塗るのではなく、光によって青く見せるという新たな試みを実現させました。

車に塗布された塗料自体は透明ですが、この車はそれを疑いたくなるほど目の覚めるような鮮やかな青色をしています。同じくモルフォ蝶の羽も透明なのですが、私たちの目には青く輝いて見えます。なぜ透明なのに青く見えるのか。それはモルフォ蝶の鱗粉に秘密がありました。

モルフォ蝶の鱗粉は透明ですが、注目すべきは色でなくその構造です。顕微鏡で見てみると、モルフォ蝶の鱗粉は短いひだが互い違いに伸びており、それが金太郎飴のように引き伸ばされたような形をしています。このひだが光を受けた際、反射した可視光線の波長が干渉しあい、青い色を強調しているため透明の鱗粉が青く見えます。

トヨタはこのひだを塗料を塗り重ね多層構造にすることで鱗粉の構造を再現し、モルフォ蝶のような鮮やかな色を出すことに成功しました。

「Structural Blue」を訳すと「構造色」といいます。物そのものの色ではなく、あるいは微細構造光を屈折させ特定の色を引き出して再現される色のことをいいます。構造色はモルフォ蝶の鱗粉のほかにシャボン玉やCD、アコヤガイなどの真珠層、タマムシやオオゴマダラの黄金の蛹などさまざまなものがあります。

DTPにも構造色に近しいものがあります。印刷をする際に使うインクはCMYK。色の三原色の原理により、これらは混ぜ合わせると色がどんどん暗く濁ってしまいます。そのため、表紙の印刷では人物の肌やタイトル文字の色をより鮮やかにするために、特殊なインクを使います。特定の色のほかに、パール、金銀などがありますが、その中にCMYKの上に乗せ、色の鮮やかさを出すために使われる蛍光色があります。

プロセスカラーの上からさらにインクを重ね合わせて色の鮮やかさなどを演出しているので、ある意味構造色と呼べるでしょう。(モルフォ蝶の鱗粉は反射した光の波長が変化したものであり、蛍光色はフォトルミネセンスという光を吸収した後電磁波を放出して発光しているので、厳密には全く違いますが、多層膜干渉ということで取り上げてみました)

今回トヨタが車で構造色を再現しましたが、遠い未来、もしかすると印刷業界にも本当の意味での構造色を再現した印刷技術が出てくるのかもしれないと思うと今後この技術がどう発展していくのかとても楽しみです。

Pocket