2026年7月1日 | #事例

AI活用ボックス Vol.1 DTPの面倒なリネーム作業をAIで自動化|旧OS対応ツールを30分で再構築した事例

AIを活用してDTP業務のリネーム作業を自動化し、作業効率を向上させた成功事例を紹介します。

 

DTP業務では、日々の作業の中に「何度も繰り返している」「少し面倒」「間違えると納品トラブルにつながる」といった作業が少なくありません。たとえば、ファイル名のリネーム作業です。弊社cte.では、得意先指定のルールに沿ってPDFファイル名を変更する作業がありました。以前は専用のリネームツールを使用していましたが、対応OSが古く、最新のmacOS環境では動作しないという問題が発生していました。そこで今回は、ChatGPTやClaudeのような生成AIを活用し、DTP業務用の小さなツールを自社で作成しました。結果として、約30分で旧OS・新OSの両方で動作するリネーム用ドロップレットを作成することができました。

DTP業務で発生していた課題

今回の課題は、データ納品時に必要なPDFファイル名の変換作業でした。具体的には、以下のような困りごとがありました。

  • 得意先から支給されたファイル名リネームツールが、古いOSでしか動作しない
  • 最新のmacOS環境では使用できず、作業環境が限定されてしまう
  • ファイル名にMD5ハッシュ値を付加する必要がある
  • MD5ハッシュ値の取得方法や、リネーム処理の自動化方法が分かりにくい
  • 手作業で対応すると、入力ミスや納品ミスのリスクがある

DTPや印刷・出版制作の現場では、このような「小さな不便」が積み重なり、作業時間や確認工数を増やしてしまいます。

MD5ハッシュ値とは?

MD5とは、正式には「Message-Digest Algorithm 5」と呼ばれるハッシュ関数のひとつです。任意のデータから、128ビットの固定長の値を生成します。通常は、32文字の16進数の英数字として表されます。簡単に言えば、ファイルごとに生成される「指紋」のようなものです。同じファイルからは、必ず同じMD5ハッシュ値が生成されます。そのため、ファイルの同一性確認や、データ破損チェックなどに利用されます。なお、MD5は現在、セキュリティ用途の暗号化には適していません。ただし、今回のように「ファイル識別」や「納品ルールに沿った名称付与」の目的で使用する場合には、実務上の確認用として活用されることがあります。

生成AIに依頼した内容

今回はClaudeのチャット画面に、以下のような指示を入力しました。

Macで、PDFファイル名にMD5ハッシュ値を付加しリネームするドロップレットを作成したい。

・macOSはできれば10.15以降対応
・MacOSXの標準コマンド「md5(md5 -q)」が使えると思う
・ファイル名の変換ルール 
 変換前:[ファイル名] + [.pdf] 
 変換後:[ファイル名] + [-] + [MD5ハッシュ値] + [P] + [.pdf]
・複数ファイルのドロップ対応
・進行状況の表示
・完了ダイアログ表示
・入力ファイル名、成功ファイル名などを確認できるようにしたい

ポイントは、プログラムの専門用語を細かく書くことではありません。大切なのは、
「何をしたいのか」
「どの環境で使いたいのか」
「どのようなルールで処理したいのか」
を、具体的に伝えることです。

生成AIで作成したリネームツールの内容

今回作成したのは、Mac上で使用できるPDFファイル用のドロップレットです。ドロップレットとは、ファイルをアイコンにドラッグ&ドロップするだけで処理を実行できる小さなアプリのようなものです。今回のツールでは、PDFファイルをドロップすると、ファイルごとにMD5ハッシュ値を取得し、指定されたルールに従ってファイル名を自動変換します。

変換例

変換前:sample.pdf
変換後:sample-xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxP.pdf

「xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx」の部分に、PDFファイルから取得したMD5ハッシュ値が入ります。複数ファイルにも対応しているため、1ファイルずつ手作業で処理する必要がありません。

作成にかかった時間は約30分

今回のケースでは、最初の指示のあと、1回だけ修正指示を行うことで目的のスクリプトを作成できました。所要時間は約30分です。これまで古いOS環境に依存していた作業を、現在の作業環境でも実行できるようになりました。

もちろん、AIに依頼すれば毎回一発で完成するわけではありません。実際の作成過程では、想定通りに動作せず、何度も修正指示が必要になることもあります。

しかし、一度ツール化できれば、次回以降は同じ作業を手作業で繰り返す必要がなくなります

DTP現場でAIを活用するメリット

DTPや印刷・出版制作の現場で生成AIを活用するメリットは、単に文章を作ったりすることだけではありません。
今回のように、日常業務の中にある小さな不便を解消するための「プチ開発」にも活用できます
たとえば、以下のような作業はAI活用と相性が良い領域です。

  • ファイル名の一括変換
  • 画像やPDFのチェック補助
  • InDesignやIllustrator向けの簡易スクリプト作成
  • CSVやExcelデータの整形
  • 納品前チェックリストの自動生成
  • 作業手順書の作成
  • 繰り返し作業の自動化

重要なのは、現場担当者が感じている
「これ、毎回面倒だな」
「ここでよくミスが起きるな」
という感覚です。
その違和感こそ、AI活用の入り口になります。

AIはDTP現場の“ちょっと困った”を解決する道具になる

AI活用というと、大きなシステム開発や高度な自動化をイメージしがちです。
しかし、実際の現場で効果が出やすいのは、今回のような小さな業務改善です。
古いツールが動かない。毎回同じ作業をしている。属人的な操作に頼っている。手作業なのでミスが怖い。
こうした課題は、生成AIを使った小さなツール作成によって改善できる可能性があります。cte.では、DTP・印刷・出版制作の現場で使えるAI活用を、実務目線で検証しながら取り入れています。AIは、現場の仕事を奪うものではなく、面倒な作業やミスが起きやすい作業を減らし、人が本来注力すべき判断・設計・品質管理に時間を使うための道具です。

まとめ

今回、cte.では生成AIを活用し、古いOSでしか動かなかったPDFファイル名リネーム作業を、現在のmacOS環境でも使える形に再構築しました。
約30分で、MD5ハッシュ値を付加するPDFリネーム用ドロップレットを作成でき、手作業や旧環境への依存から解放されました。
DTP業務の中にある「ちょっと面倒」「間違いやすい」「毎回同じことをしている」という作業は、AI活用によって改善できる可能性があります。
cte.では今後も、印刷・出版・DTPの現場で実際に役立つAI活用事例を「AI活用ボックス」として発信していきます。

よくある質問

Q. プログラムが分からなくても、AIでツールを作れますか?

はい。専門的なプログラムの知識がなくても、「何をしたいか」「どのようなルールで処理したいか」を具体的に伝えることで、小さなツールを作成できる場合があります。ただし、動作確認や修正指示は必要です。

Q. DTP業務では、どのような作業がAI活用に向いていますか?

ファイル名の一括変換、PDFチェック、CSV整形、InDesignスクリプト作成、作業手順書作成、納品前チェックリスト作成など、繰り返しが多くルール化しやすい作業が向いています。

Q. AIで作ったスクリプトは、そのまま業務で使えますか?

必ず動作確認が必要です。特に納品物に関わる処理では、テスト用ファイルで検証し、想定通りに処理されるかを確認したうえで使用することが重要です。

Q. AI活用は大企業でないと難しいですか?

いいえ。むしろ、現場の小さな困りごとをすばやく改善できる点では、中小企業や制作現場との相性が良いと考えています。大規模なシステム開発でなくても、日々の業務改善から始めることができます。

 

DTP・印刷・出版制作の現場で、「この作業、自動化できないかな?」と感じていることがあれば、ぜひ一度ご相談ください。cte.では、現場の実務に即したAI活用・業務改善をサポートしています。