みなさん、生成AIはきっと毎日使ってますよね。
文章を書いてもらう。会議の議事録を要約する。資料を探してもらう。アイデアを出してもらう。ものすごく便利。もうAIがない暮らしには戻れない、という人も少なくないでしょう。
でも、、、、
それで、あなたの生産性は上がりましたか? 労働時間は短くなりましたか? 会社の売上は増えたでしょうか?
もし答えが「ノー」なら、コストをかけてAIを使う意味、ないですよね?
もちろん、AI自体に意味がないとは言いません。AIには、生産性を上げ、労働時間を減らし、売上を増やす力があります。
それなのに大きな変化が起きていないのは、仕事の中でAIを便利に使えてはいても、仕事そのものはAI以前とほとんど変わっていないからかもしれません。
それは「愛人AI」です。
愛人との恋は楽しいかもしれませんが、住所も、家族構成も、名字も変わりません。仕事の仕組みを大きく変えないデジタル化やAI活用も、これと同じです。
参照:https://www.terrace-lab.com/post/20260611
もし、生産性を本気で向上させるなら、「夫婦AI」が必要です。夫や妻は、家族をつくって人生を変えるパートナー。AIも仕事を根本から変えるパートナーだと考えると、景色が変わるんじゃないかと思います。
トレンドは「夫婦AI」
ぼくはビジネスライターという仕事柄、企業の事例をよく取材します。最近は、その多くがAI。それも、「夫婦AI」に話がだいぶシフトしています。
どのAIがいいとか、プロンプトをどう書くとか、そういう話はもう終わった感覚があります。いま企業で起きているのは、AIを前提に仕事の仕組みそのものをどう変えるか、という業務変革の話です。
ところが、こうした事例はビジネスサイドには、とにかくわかりにくい。
情報部門向けに書かれたものが多く、専門用語やツールの名前が次々に出てくる。しかも、話の中心はデータです。経営者やマーケター、営業などが読んでも、「じゃあ、自分たちはどうするの?」「ITに詳しくないとAIも使えないでしょ」となりがちです。
ぼくは、ここに大きな問題があると思っています。
AIそのものは、もはや誰でも使えるようになりました。これから必要なのは、自分たちの仕事にAIをどう組み込み、どんな仕組みに変えるかを考えることです。
そして、それが得意なのはAIの専門家ではなく、業務の最前線にいる人たちですよね。
だから、難しいAI活用事例を、ビジネスサイドが「自分たちなら仕組みをどう変えるか」を考えられる形に翻訳したい。
AI活用モデルをビジネスサイドから設計しやすくするため、考えたのが「明るい家族AI計画」のフレームワークです。
AI活用を「現実・システム・価値」の三層で考える
実際に私たちが夫婦になる(結婚する)ときも、どんな家庭を作りたいか、話し合いますよね。
まずは、お互いの価値観をよく知り、子どもの時期や人数、その他の暮らしを設計するはずです。そのうえで、結婚という制度や、地域や住まい、働く会社などの社会システムと接続します。そのうえで、家族の幸せという価値を追求していきます。
まあ、そんなに計画できる場合ばかりではないのは承知しつつ、AI活用においても業務を起点に、データやAIの世界を分けて考えるといいと思います。具体的には、「現実」「システム」「価値」の三層です。
このあとの事例がわかりやすいですが、現実の層では自社の業務がどんな仕組みになっていて、どう変えていきたいかを考えます。デジタル一切なし。100%アナログの世界で、ここの解像度が高いほど、AI活用は洗練されます。
システムの層は、どんなデータやツール、AIを使うかという話。これは手段にしか過ぎず、現実(業務)の層をデジタルに置き換えられればOK。主従関係で言えば圧倒的に「従」なのですが、AI活用の議論はここを中心に行われがちです。
もちろん、最低限の素養は必要だけれど、ちゃんと業務の要素を「こんなデータやAIがあれば」とシステムに置き換えられればOKです。
価値の層は、また業務に戻って、結果としてどんな効果が現れるのか、何が新しいのか、ということ。これもデジタルとは切り分け、現実のビジネスを考える必要があります。
「読者」を「生活者」として理解した集英社
ここで、ぼくが記事を書く中でとても好きな事例を紹介します。集英社のAI活用です。
出版社はもともと、取次や書店を介して本を売るBtoB2Cのビジネスで、読者の行動を知ることが難しいモデルでした。近年はマンガアプリなどによって直接顧客とつながれるようになったのですが、こうなると少し欲張りたくなります。
例えば、読者がどんなマンガが好きなのか、だけでなく、普段どんなものを食べ、どんな服を着て、どんなお酒を飲んでいるのか。ひとりの生活者として理解できたら、いろいろなことができそうですよね(現実の層)。
そこで集英社は、従来の自社顧客データに、外部サービスを利用してVポイントの購買データを掛け合わせました。日用品やファッション、推し活、他社作品など、自社の外での購買まで見えるようになります。これだけの膨大なデータを人間だけで分析するのは無理ですから、AIを活用しました(システムの層)。
すると、本当に生活者として読者を捉えられるようになりました。例えば、同じ20〜30代女性のマンガファンの中でも、『ワンピース』の読者は缶ビール、『怪獣8号』の読者はチューハイの購買傾向が高い、といった違いまで見えてきたんです。
これは大きいですよね。
作中でキャラクターにどんなお酒を飲ませるのか。コラボ商品なら何がいいのか。もちろんお酒だけでなく、Vポイントは総合的な購買データが反映されますから、さまざまな切り口で生活者像が見えるわけです(価値の層)。
現実: マンガの読者をひとりの生活者として理解したい。
システム: 自社データ × 外部購買データ × AIで分析する。
価値: 読者理解を、コンテンツや新しい企画につなげる。
この画を描けるかどうかが、AI活用では大事なのだと思います。
出発点は「どのAIを使うか」ではありません。自分のビジネス、業務を高い解像度で理解し、「本当は何ができたらいいのか」を考えること。
これはAIの専門家ではなく、ビジネスの最前線にいる人のほうが得意なはずです。ぜひ、現実/システム/価値の三層からなる「明るい家族AI計画」で、いろんな事例や、御社のAI活用モデルを考えてみてください。