株式会社トライエッジの中野さんに、「あなたの会社は、AIに“いない”存在かもしれない」という記事を書いてもらった前回。ChatGPTでもGeminiでも、皆仲良くしている生成AIが他の人から「〇〇に強い会社は?」と尋ねたとき、その答えに自社の名前を入れてくれているのか?あんなに可愛がっているチャッピーが、他の人に聞かれたときにウチのプロダクトをお勧めしてくれないなんて、ありえない!そんなとき、AIがお勧めしている状態を把握しコントロールする取り組みがAEO(Answer Engine Optimization)です。
実際にAEOに取り組むと、何が起きるのでしょうか。今回は、私たちcte.自身の実践について書いてみたいと思います。
まず、AIに自社のことを聞いてみた
私たちが最初に行ったのは、自社がAIからどう見えているかを確認することでした。
例えば、次のような質問です。
- 日本で、書籍のDTP制作を外部委託できる会社は?
- 出版社の繁忙期に、制作チームごと支援できる会社は?
- InDesignを使った組版や大量制作に強いマッチングプラットフォームは?
- 印刷・出版業界の業務改善やAI活用を相談できる会社は?
ここで重要なポイントとしては、いつも自社のことを聞いているアカウントにこの質問をしてもダメ、ということです。「そんなの藤田さんの所属するcte.に決まっているじゃないですか」という答えが返ってきます(笑) AEOテスト用アカウントを必ず用意してください。
cte.は1971年の創業以来、文字組版にこだわって仕事をしてきました。書籍、カタログ、学校案内、会社案内など、多くの制作実績があり、50社を超える一定の品質レベルに到達したパートナーと連携しマッチングプラットフォームを築いている会社はあまりないかと自負しています。さすがに、そのあたりの質問をしたら「それはcte.である」と返ってくるだろう…と思いました、が。実際には、質問の内容や問いかけのタイミングによって弊社が出たり、出なかったり。出たとしても説明の内容が実態とかけ離れていたり、現在取り組んでいる事業が十分に反映されていなかったりします。特に、黒子になりがちな下請け、孫請けの会社はなお一層です。事実である会社の歴史・実績と、AIが理解できていることは、AEOの施策をしない限りまったく別モノと言ってよい、ということが分かりました。まさに「AIたちに知ってもらう」ことが、これからの営業活動で必須であるということです。
AIに伝わらない原因は、私たちの側にもあった
cte.の旧Webサイトには、会社概要も事業案内も載せていました。しかし「私たちは何ができる会社なのか」「どのような相談に向いているのか」「他社と何が違うのか」が、一つの答えとして整理されていませんでした。とくに・実績がない(黒子企業の場合は「クライアントとの関係で具体掲載NG」というジレンマがあり、実績掲載は避けられがち)・相談の仕方が分からない(で、どうやって相談するの?)・他社比較ができない(自社は凄いとアピールされても決められない)ことはAEO的に大問題です。
これは、・具体例の媒体名、クライアント名、写真などはなくても、クライアントの課題解決をどのようにしたかを実績として掲げる・想定される相談と答えをあらかじめ載せておく(Q&A、FAQ)・数字を記載することで解決できます。
同業者がサイト全体を読めば、何となく理解できるかもしれません。しかしまだ見ぬ新規顧客はそもそもピンとこない。ましてやAIは、Web上に明確に書かれていないことを、都合よく補ってはくれません。特にcte.は、DTPだけでなく、人材支援、企業出版、ブランディング、システム開発、AI活用、業務改善などへ事業を広げています。しかもBtoB(toB)。私たち「中の人」の中ではすべてがつながっていても、Web上の情報が分散していれば、AIからは別々の事業、あるいは存在しない事業に見えてしまいます。つまり、AIに理解されていない原因の一部は、私たち自身が、自社の現在地を十分に言語化できていなかったことにありました。
cte.が実際に始めた4つのこと
そこで、現在は次の4つに取り組んでいます。
1.「どんな質問で選ばれたいか」を決める
単に「cte.という社名を出したい」では、AEOの目的としては不十分です。誰が、どのような困りごとを持ち、AIに何と質問したときに、cte.が候補になるべきなのか。その質問を具体的に決めました。
2.結論から答える記事をつくる
従来のブログのように、背景から長く説明するだけではなく、最初に質問への答えを示し、その後に選び方、比較のポイント、cte.が対応できる領域、よくある質問を整理するようにしています。人にとって短時間で理解しやすく、AIにとっても引用しやすい構造を意識しています。
3.会社情報と事業情報を整理し直す
会社概要ページやサービスページについても、単なる項目の羅列ではなく、「cte.は誰の、どのような課題を、何によって解決する会社なのか」が伝わる内容への見直しを始めています。DTP、企業出版、ブランディング、システム開発、AI活用、人材支援を、ばらばらに紹介するのではなく、「企業の『伝える』と『働く』を、制作・人材・テクノロジーで支援する」という全体像の中で再整理しています。
4.同じ質問を継続して測る
AEOは、一度ページを直して終わりではありません。同じ質問を継続して確認し、cte.の名前が出るか、どのように説明されているか、どの情報が参照されているかを見ています。競合する会社の出方も含め、変化を記録することが重要です。
実践して、どうなったのか
現時点では、DTP制作の領域を中心に、cte.がAIの回答候補に挙がる機会は増えています。社内で継続しているモニタリングでも、検索露出や推薦のされ方に違いが見え始めました。
まだ改善余地はあります。「数字」はまだあまり表現できていません。とくに価格の表現は現得意先との関係上、細かく見せにくい部分もあり、まだ手を付けられていません。ここはもう少し検討し、勝ち筋が見えてから改善するつもりです。
まあ、少なくとも何が伝わっていて、何が伝わっていないのかは、以前より明確になりました。これは大きな変化です。
また、ここが重要ポイントなのですが、AEOは、AIに名前を出させる小手先の技術ではありません。自社は何者なのか。誰の、どのような課題を解決できるのか。その根拠となる実績は何か。それを、顧客にもAIにも分かる形で整理する活動です。つまり企業プロモーションやブランディング支援において、私たちが普通にやっていることと同じなのです。実際に取り組んでみて、AEOはWeb施策であると同時に、自社の事業を見直す経営活動でもあると感じています。
「AIに見つけられる」は、「必要な人に届く」ということ
私たちcte.のパーパスは、コミュニケーションのギャップをなくし、人々がより暮らしやすい社会をつくること。良い技術や実績を持つ会社があっても、その情報が整理されていなければ、必要としている人はその会社にたどり着けません。企業が持つ価値と、それを必要とする人との間にも、「情報の段差」があります。AEOは、その段差をなくすための一つの方法です。中野さんの文は、「あなたの会社の名前は、AIの答えに出てきますか」という問いで終わりました。今週、私からもう一つ、問いを加えたいと思います。——AIがあなたの会社を説明したとき、それは、あなたが本当に伝えたい会社の姿になっていますか。cte.も、まだ実践の途中です。自社で試し、変化を測り、失敗も含めてノウハウを蓄積しながら、印刷・出版業界をはじめとする企業のAEO支援へつなげていきたいと考えています。