7月 15, 2008

ピンクのネクタイ、あおいくま

上司(K)が客先に行くというので、背広の上着まで着てでかけようとするのを見て、

 「こんな暑い日でも上着とは大変ですね」

日頃からTシャツ+ジーパンなどのラフな服装で仕事をしているわれわれにとって、暑い最中に背広で出社するなんて信じられません。ふっと通常の3倍細くなった上司(K)の瞳は、

 「お前に言われたかねーよ」

と私に語りかけているようでしたが、さすがに口元に微笑みを絶やさないところに人間的な深みを感じさせます。

あらためて上司(K)の服装を見たところ、彼が普段と印象の異なるピンク色のネクタイをしているのに気がつきました。

 「訪問先に応じてネクタイの色を選んでいるわけですか?」

上司(K)の奥様は銀行にお勤めとのことで、銀行員にとっての「常識」をたまに披露してくれます。きっと、そうした基準からそのピンクのネクタイを選んだに違いないのです。銀行員の常識からいえば、鼻毛が出ているのはタブーだとかで、それを聞いてすぐさま鼻毛バサミを買い求めた私にとっては見逃せない情報です。

聞けば……なんでも、謝罪に行くときには赤い色は避けて青を着けて行くのだとか。逆に、積極的な交渉を行うさいには活動的な色がよいのだそうです。ただ、私のような能天気そうな者が全身青い服をまとって謝罪に行っても、それはそれでナメてんじゃないのかと反感を買いそうですが……。

日頃から、

 「人間は外見じゃない。中身だ!」「そうだそうだ!」

と公言してはばからない私たちですが、そうはいっても服装ひとつ整えられないのでは、世間では「その程度の人間」と判断されてしまうのだよ、と上司(K)は私たちに語りかけます。

語りかけながら、なぜ彼は遠い目をしているのでしょうか? もしかして、私の黄色いプーさんTシャツを問題にしているのでしょうか。それとも、夏場は欠かさないサングラスを問題にしているのでしょうか? はたまた、ディズニーランドで買ってきた帽子をかぶって出社しているのが気に入らないのでしょうか……。

その真意については図りかねますが、そんなところに(U)が戻ってきて「銀行系のお友達から『あおいくま』っていうのを教えてもらいましたよ」と、おトクな情報を披露。なんでも、銀行員のモットーみたいなもので、

  せるな

  こるな

  ばるな

  さるな

  けるな

の頭文字をとって「あおいくま」なのだそうです。一瞬、宇多田ヒカルの「ぼくはくま」を思い出してしまいましたが、この際関係なさそうです。何か役立ちそうなフレームワークだったので、思わずメモをとり……こざくらラボに書いておこうと決意したのでした。(N)

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