一流アナリストの7つ道具
テレビ東京「ワールドビジネス・サテライト」のコメンテーターでおなじみのロバート・フェルドマン氏の本『一流アナリストの「7つ道具」』を読んでみました。
ロバート・フェルドマン氏は野村総研、日本銀行を経てIMF(国際通貨基金)、モルガン・スタンレー証券 日本担当チーフアナリスト 及び マネージングディレクター(株式調査部長)になったという、ケチのつけようのないほどの一流アナリスト。そのうえ、ネイティブでもないのに日本語でウィットとユーモアに富んだコメントを、簡潔かつ分りやすい言葉で伝えられるという、スーパーマンでもあります。
彼の本を読んだことがなかったので、どんな文章を書くんだろう? と、なかば興味本位で手にとってみました。
本を広げての第一印象は「最悪」。
もう、冒頭から「これが全部できないとダメ。ひとつでも出来ないと一流のアナリストにはなれないよ」と、突き放し気味の書き出しで圧倒されます。自分に厳しい人であり、他人にも妥協を許さないという「一流」ならではの気迫が感じられます。
日本人の書き手の場合には、ここで「さあ、みんなも今日からスーパービジネスマンになれますよ!」的な書き出しで、全部読んでみてはじめて「誰にでもできることではないな」と気がつくというストーリーが多いのですが……ロバート・フェルドマン氏の場合にはまさにその逆です。
もしかしたら、多くの読者はここで読むのを諦めてしまうかもしれません。ここまで読んだのだから、と食らいついて読み進んでいくと……ロバート・フェルドマン氏の駆け出しの頃の失敗談など、実に分りやすく共感しやすい話が展開されます。
ここまで読みすすんで、ふと「アナリストになりたくてこの本を買ったわけではない」ことに気付きます。一流アナリストになりたいわけではなく、そのノウハウに興味があるのだから、別にすべてをマスターできなくてもいいんじゃないか、と。
そして、本題であるアナリストの7つ道具(分析力、プレゼン力、人間力、数学力、時間管力、言語力、商売力)についての説明が続くのですが、このあたりまで来ると、まあ普通の文章かなという印象です。いい題材を説明しようとしているんだけれど、いかんせん言葉が足りない。850円という安くて薄い本なので、仕方ない部分はあるのですが……実技編についてはもう少し咀嚼して説明していただきたい気もします。
巻末には、ジャンル分けした参考文献がついており、このあたりのサービス精神には見習うべきものがあるでしょう。ここまで整理された参考文献リストというのはなかなか作れないものです(めんどくさくて)。
この本でゲーム理論や決定木について興味を持ち、自分でもそれをもとにいろいろと考えをまとめてみようと試みたのですが……なかなか本の中で説明されているようにはできません(ちょっとくやしい)。
自分にとっては、「読んでおしまい」という本ではなく……「読んだからこそ、より勉強したくなる」本というのでしょうか。赤ペンや付箋で整理しながら、さらに他の本を読んだり調べものをしたくなりました。
社会人になりたての頃の、有形無形のプレッシャーをなつかしんで味わってみたいという方におすすめの1冊です。(N)
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